脱サラで農業!

脱サラで農業を始めるという人が増えています。農業にはどこでするかによっても始めやすさが違うなどの事情があるようです。脱サラして農業を始める人のために情報をまとめてみたいと思います。

記事の目次

脱サラで農業!

「脱サラして農業を始めるなんて、失敗するに決まってる。農家はそんなに甘くない。」そんな風に言われていたのはとっくの昔の話です。いまは積極的に就農し「サラリーマンを辞めてよかった。」という人が増えています。またその子供さんも農業に興味をもつなど、日本の農村もまだまだ捨てたものではありません。

しかも20代30代の若い世代が農業を始めて、農村に移り住むケースも目立っており、年間に2,000人以上の就農者がいるといいます。ここまで就農者が増えた大きな原因は「青年就農給付金」という制度ができたからです。

年間最大150万円が支給され研修期間の2年間の生活費や土地代にあてることができるといいます。資金不足の若い世代にとってはとても助けになる制度です。空き家なども自治体によっては無料で貸し出してくれるようですね。

農家になる魅力は「土と共に生きていくことの解放感、癒し」だといいます。土の持つ大自然の力ということですね。そして結婚して子供が生まれた世代の中には、子供を自然の中でのびのびと育てたいと農家への道を選んだといったケースが多いです。子育てをするという意味ではけっして都会はいい環境とはいえません。犯罪や交通事故に巻き込まれることも考えられますし、待機児童問題はいつまでたっても改善されないでいます。

その点、農村では安全で自然も豊か、子供たちも町ぐるみで見守ってもらえるという温かさがあります。そして生活費があまりかからないことも子育て世代にとっては大きな利点です。家賃も安い上に衣料費もあまりかかりませんね。そして都会のスーパーマーケットでは高すぎる野菜をご近所さんがぽんと分けてくれることもあります。

ただし、いいことづくめでもありません。農業も事業ですのでしっかりとした計画をもってのぞまないと、結局失敗して都会に戻らなければならない場合もあるのです。資金や年間の収支などの試算も他のどんな起業とくらべてもラクにできるといったことはありません。

農家への脱サラ起業で失敗率が低いケースは、もともと生まれ育った土地であったり、親の持つ農地があるなど起業というよりも、継承に近い場合ではほんの数十万円で始めることができるためリスク自体もないといえるでしょう。そのような環境で始められる農業はとてもうらやましいですね。

脱サラ農業起業家が増えて少しでも日本の限界集落の過疎化が食い止められれば、素晴らしいことです。

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脱サラ農業に資金はいくら必要か

脱サラして農業を始める場合、どれくらいの資金がかかるのでしょうか。農業にかかわらず起業には準備資金というものが必要です。農地代、トラクター、肥料や苗など農業ならではの仕入れが欠かせませんが実際にどれくらい必要かを見ていきたいと思います。


農業を始めるのに必要な資金


全国新規就農相談センターによると新規就農者が用意した自己資金は平均で569万円(土地取得代のぞく)となっています。そのうち農業を始めて1年目の生活費が159万円、設備投資や経営に必要な金額が411万円です。

脱サラ農業を始めてからの初年度は収穫までの期間や収穫しても売り物にならない場合が多く生活費の準備が重要となってきます。初年度の所得で生活ができるというのは24.5%、2年目以降から生活できそうだと答えた人が76.4%という結果です。

農業を始めた人のおよそ3/4が初年度には生計が成り立たないという結果になりました。


農業の年間経費は


肥料や苗、燃料、出荷費用などの経費については1年目の平均で158万円だということがわかっています。これはどんな作物を栽培するのかによっても違ってくるのですが、概ね、毎年かかってくる経費となりますので、毎年手元に置いておかないといけないことになります。

生活費の159万円とあわせると317万円が最低の収入の目標となるでしょう。あくまでも平均ですので参考にとどめてください。また農地の賃料は別にかかってきます。


初期費用は何を栽培するかでかわってくる


まずは初期費用をおさえるところから、スタートさせるのが安全です。最初はビニールハウスなどの施設や光熱費を必要としない露地野菜から始めるのがいいでしょう。

露地野菜とはキュウリ、キャベツ、ナス、大根、ニンジン、レタス、枝豆、ブロッコリーなどの家庭菜園でも収穫できる野菜です。ビニールハウスが設営できれば作れるのがトマト、ネギ、シシトウ、イチゴ、メロンなどです。

露地野菜では設備費が300万円ほどでできるのに対して、ビニールハウスでは800万円ほどの投資が必要になります。その分、気候に左右されずに年間を通して栽培でき、収入も安定しますので、徐々に施設投資に移行していくのがいいです。

コメに関しては初期費用のほとんどが田植え機やコンバインなどの機材となり、投資に600万円近くかかることから、新規参入者がコメを専業で始めることは少なくなっています。

いかがでしょうか。大体の必要資金はイメージしていただけたでしょうか。飲食店などで起業するよりも安い資金で始められることがわかりましたね。

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脱サラ農業で支援は受けられるか

脱サラ農業に関して言えばどんな企業よりも支援が手厚いかもしれません。無利子での公庫資金も用意されていますので、余裕を持った経営のためにも是非、積極的に利用したものです。


新規就農者向け公庫資金


  • 青年等就農資金

新たに農業経営を開始する方を応援する無利子の資金です。

【対象】:認定新規就農者、市町村から青年等就農計画の認定を受けた個人または法人

18才以上45才未満、特定の知識、技能を有する65才未満の者、それらのものが役員の過半数を占める法人

【資金使途】:施設、機械の取得等・長期運転資金(農地の取得は除く)

【融資限度額】:3700万円(特認1億円)

【償還期限】:12年以内(そのうち5年以内は据え置き期間とする)

【金利】:無利子

【担保】:原則として融資対象物件のみ

【保証人】:原則として個人の場合は不要、法人の場合で必要な場合は代表取締役

  • 経営体育成強化資金

【対象】:農業を営む個人、法人、団体であって経営改善資金計画を融資期間に提出した方

【資金使途】:農地等の取得等、施設、機械の取得等、長期運転資金

【融資限度額】:負担額の80%の範囲内で1億5000万円以内(法人、団体は5億円以内)

【償還期限】:25年以内(そのうち3年以内は据え置き期間とする)

【金利】:0.30%

【担保・保証人】:相談の上決定

【必要条件】

◆市町村から青年等就農計画の認定をうけていること

◆認定された青年等就農計画において、農地等を取得する計画が含まれていること

◆経営改善資金計画について特別融資制度推進会議の認定を受けていること

  • 農業改良資金

【対象】

1.エコファーマー(認定導入計画に従い持続性の高い農業生産方式を導入する方)

2.農商工等連携促進法の認定を受けた農業者等(認定計画に掲げる事業に取り組む方)

3.農林漁業バイオ燃料法の認定を受けた農業者等(認定計画に掲げる事業に取り組む方)

4.米穀新用途利用促進法の認定を受けた生産者等(認定計画に掲げる事業に取り組む方)

5.六次産業化法の認定を受けた農業者等(認定計画に掲げる事業に取り組む方)

【融資限度額】:5000万円(法人は1億5000万円)

【返済期限】:12年以内(そのうち3年以内は据え置き期間とする)

【金利】:無利子

【担保・保証人】:相談の上決定

これらは日本政策金融公庫の運営する活動促進資金です。中小企業や個人向けなどほとんどが金利があるのに対して、農業は無利子の支援が多いので利用することで安定した経営ができます。ある程度の設備投資をして安定した栽培に取り組むことが可能ですね。

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脱サラ農業での収入例

脱サラで農業を始めようとしている人にとって気になるのがその年収です。一般的には200万円~300万円ともいわれていますが、実際のところはどうなのでしょう。やり方や取り組み方によっては1000万円の年商をあげている農家も少なくないようです。


農業経営統計調査調べ


2017年6月23日公表の農業経営統計調査では全国の農業経営収支では、畑作経営農家の収入は849万円で、農業経営費は577万円となっています。所得は272万円という結果です。

いかがですか。思っていたよりも年収は少ないと思ったのではないでしょうか。ですがこれは平均ですので、もっと稼いでいる農家もいるし、逆にほとんど作物を作らず年金で暮らす農家もあるのです。

自分たちの食べる分だけ作農している農家は日本全国で90万戸ほどあるそうです。それに対して販売農家は160万戸でそのうちの約2000戸が1億円以上の年商を上げています。


農家で年収を稼いでいるのは特殊な例


ではどのような農家がそれほどの年商をあげているのかというと、「観光やインターネットで成功している」という条件があるようです。たとえばいちご狩り、ブルーベリー農園など、年間何万人もの観光客の誘致による入園料や農作物の加工品による売り上げが大きいということが分かっています。

またインターネットでの販路拡大による安定収入は大きな条件となりますので、農家とはいえパソコンに向かっての営業が欠かせないようです。そのため稼げている農家は農業法人として多くの人を雇用する企業となっています。

そのことを鑑みると個人で農家を始めた場合の年収は平均272万円をさらに下回ることが予測できます。


脱サラして農業を始めた場合の実情


脱サラをして農業を始めた人が最初に感じるのが体力的な辛さです。休みはほとんどとれず、日の出から日の入りまで毎日12時間労働は当たり前となるので、元気なうちはいいけれど、体調をこわしたらどうなってしまうのかという不安が大きいといいます。

そして日本が災害の多い国であることも、農家がいつまでも生計が安定できない理由です。台風、長雨、冷夏などにより年収がゼロとなる可能性がありますから、少しでも蓄えなくてはということになります。

実質、脱サラして補助金を給付されても生活は食べていくギリギリであることは覚悟しておいた方がいいでしょう。世の中にはいい話しか表に出ませんが、借金をして農具をそろえて農家を始めた方の中には、後悔している人も多くいると想像できますね。

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脱サラ農業での成功

脱サラ農業で成功といわれるには年収350万円が最低のラインだといわれています。脱サラ農業で成功している人は、農業以外の部分での収入を確保している特徴がありますのでご紹介しましょう。


年収1200万円のブルーベリー農家


「農で1200万円!」の著者、西田栄喜さんは借金、補助金、高額な機械などゼロ、初期投資たったの143万円で1200万円稼げるという脱サラ農業体験を本で紹介しています。この方は本の出版に加え就農支援の相談に乗るなど、しっかりと農業以外の部分での成功を収めているといえるでしょう。

またブログでのIT集客で確実にブルーベリーの売り上げを確保しています。もともとブルーベリー自体が人気の果物で値段も安くないので目の付け所が良かったこともありますが、人にはできないやり方で脱サラ農業を成功させていますね。


トマトの農業システムを売る農業


国は平成27年から企業による農業参入を促進するため農業法人の参入条件を緩和しました。そこで成功を収めているのが銀座農園株式会社です。同社はフルーツトマトの栽培技術を確立し、ハウスから農場の整備、収穫物の流通ルートまでをパッケージ化しシステムとして売っているのです。

トマトのマーケット規模は約2700億円と大きく、とくにフルーツトマトは高値で取引されることから農業システムの軸としたといいます。

農業システムは2000㎡が5000万円、3000㎡が8000万円、5年から8年で投資が回収できるとし、全国で7団体の自治体などがこのシステムを利用しているのです。


体験型ファームで年間50万人を集客し成功


三重県伊賀市にある「伊賀の里モクモク手づくりファーム」では手づくり体験教室や宿泊、温泉、パンやハムの買い物ができる体験施設として大成功しています。

消費者の声を直接聞くことで何が求められているのかを知り、体験を通じて安全や安心をわかってもらえる方法を積極的に取り入れたことがさらに集客を促進しているのです。

お客さんがしたいことを次々に増やすことで「ここへ来れば楽しい!」を実現しています。また体験に来たお客さんが加工した農産物を購入するため売り上げの安定化にも貢献しているのです。

一言で農業といっても随分とその形が様変わりしてきているのが、成功するパターンから見えてきます。農業は単に土地を借りて、作物を作るだけでは成り立たないのかも知れません。

IT経営、ホームページ、ブログ、直販、出版、コンサルタント、システム構築など農業を支える要素をいくつ作れるかが成功の条件だといえるでしょう。一束100円のほうれん草を道の駅で販売するだけでは、もはや農家として収入を確保するのは限界があるように思います。

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脱サラ農業での失敗

脱サラで農業を始める場合、気をつけないといけないのがイメージと現実の大きな違いです。農業が衰退の一途をたどっているのは、ひとえに後継者不足です。土地や農具、そしてノウハウもありながら農家の後継者は家業である農業を継ぎません。

それはいかに農業が大変で収益が低いかを子供の頃からよく知っているからです。「食べていくには困らない」この言葉に安心感を覚えるなら、今一度、農業についての現実を考え直してみる必要があるでしょう。「食べていくので精一杯」そのような意味合いを含んでいるのかも知れないのですから。


人間関係での失敗


会社や都会での人間関係に疲れて脱サラ農業で、田舎でのんびり暮らそうと思うならそれは難しいかもしれません。どちらかというと田舎の方が圧倒的に人間関係は難しいです。しかも寄り合いや付き合いもひんぱんにあるでしょう。

そして若ければ若いほど(農村では60才は若者)行事や祭りに駆り出され、ただでさえ休みが取れない上に人間関係で疲れ果ててしまう可能性だってあるのです。そしてその人間関係のストレスは家族にもおよびます。とくに農家の嫁は駆り出されることが多いのです。


販路が広がらず失敗


まともな作物を作れるようになっても販路が広がらなければ生活は苦しいままです。インターネットで販路が拡大できると思うなら、そんなに簡単なことではありません。ブログを書いていても読者が野菜を注文してくれるようにもなりません。

多くの脱サラ農家はつくり始めたホームページを数ヶ月で放置しています。それはまったく反応がなく集客を諦めたからです。ですので、確かな販路を確保してから脱サラすることをおすすめします。

企業の農業参入のうち9割が失敗し、農業からの撤退をしているというのをご存知ですか。資金も人手も販路もある企業ですら、農業経営は難しいというのが現実なのです。


自己資金が足らず失敗


脱サラして転職するのと就農するのとでは決定的に違うことが自己資金の重要性です。転職の場合には1ヶ月もすれば最初の給料がもらえますが、農業の場合は作物を植え付けて収穫出来てはじめて売り上げが立ちます。

早い人で1年はかかるでしょう。その間の生活費について十分な準備ができていないと、たちまち借金をしなくてはならなくなります。7割の新規農業者の生計が立たないというのも、最初の見積もりが甘いからなのです。農業は資材など細かな出費も多くあり、収入が入るまでの支出の多さは他の職業とは比べ物になりません。

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脱サラ農業で後悔しないために

脱サラして農業を始めて後悔する人はとても多いといいます。その原因はどうやら「覚悟の甘さ」にあると農業経験者は分析しています。「こんなはずじゃなかった」「こんなにしんどいとは思わなかった」となった時には借金もあり、助成金も受けていてやめることすらできなくなるのです。


青年就農給付金(農業次世代人材投資資金)


次世代を担う農家となることを試みる人に対して農家を始めるまでの研修期間の2年間と農家になってからの5年間、年間150万円を給付してくれるという農林水産省の助成制度です。この農業を始める人にとってはとてもありがたい給付金が脱サラで農業を始めた人を後悔させる大きな原因となっているのです。

まず、補助金が出るせいで本来は農家にならなかった人へのハードルを下げてしまった事。安易な気持ちで農家になる人を増やしてしまったともいえます。平成28年度では新たに3813人がこの制度を利用しているのです。

(研修型1531人、農業開始型2282人)

利用者の41%が20代ということですから、若者への農業従事をいかに後押ししているかがよくわかります。

次にこの制度は、受給を受けた年月の1.5倍の期間、農業をしなくてはならないことになっています。2年受給すれば3年間は農家をやめられません。やめるとなると受給した助成金を返還しなくてはならないのです。

そのため、この助成金を利用せずに農家になるという人もいます。ある意味賢明な選択だといえるでしょう。


脱サラ農業で後悔しないために


脱サラ農業でもっとも大切なのが家族の協力となるでしょう。失敗する新規就農のほとんどが最初から妻が乗り気ではなかったというものです。妻が農業をあまり手伝わない農家はほとんど稼げていないといいます。

最初は夫だけで頑張るつもりでも時間にも限りがあります。妻が夫と同じくらい従事しなくてはならないことを知っておかなくては夫婦ともに大きく後悔することになるでしょう。


副業を準備しておく


準備資金がじゅうぶんに用意できたとしても、農業をしている以上、災害や天候には勝てません。農業こそ何らかの副業を考えておくべきです。副業にもいろいろありますができればアルバイトなどではなく時間をかけずにできるものがいいでしょう。

株、不動産投資、アフィリエイトなどが該当するのではないでしょうか。副収入なしには農業は脱サラして参入すべき職業ではないといえます。それほどシビアな農業に就くという覚悟を大切にしてください。

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