AIに売上表を分析させる前に|集計ミスを防ぐデータ整理と確認の手順

取引データの重複と返金を整理する紙のカード模型

こんにちは。バナナデスクです。

売上表をAIへ渡して「どの商品が伸びていますか」と聞いたら、分かりやすい分析が返ってきた。でも合計を見ると、いつもの管理表と数字が違う。そんなとき、文章の言い回しを直しても原因には届きません。

返金がプラスの金額で記録されている、同じ取引を二度取り込んでいる、翌月の行が混ざっている。どれも、表を見ただけではAIに伝わらない可能性がある条件です。

この記事では、30行の架空データから、集計条件を決め、誤りを見つけ、分析文を採用できる状態にするまでを示します。計算は実際に行っていますが、事業の実績やAI製品の精度実験ではありません。税務上の売上計上ではなく、指定した期間の取引を整理する管理用の例です。

「売上を分析して」の前に、合計の意味を決める

申込日、入金日、サービス提供日では、同じ取引でも属する月が変わることがあります。今回は「2026年9月の日付を持つ完了取引を対象に、購入から返金を差し引いた税込の金額」と定義します。

1行は一つの取引記録で、購入者一人ではありません。同じ人が二度購入する場合もありますし、返金は購入と別の取引として記録されています。この定義を決めずに行数を顧客数として扱うと、人数まで誤ります。

今回の計算条件
項目 採用する条件
期間 2026年9月1日以上、10月1日未満
状態 完了のみ。取消は除外
重複 同じ取引IDで内容も同じ行は一度だけ数える
金額 すべて同じ税込・円の条件
返金 元データの正の金額を、集計時は負の金額にする
対象外 利益、税額、顧客人数、商品別の需要増減

読者の表では、取引IDが一つでも明細行が複数あるかもしれません。その場合、IDが同じという理由だけで削除してはいけません。注文単位なのか、商品明細単位なのかを先に確認します。

30行をそのまま足すと522,500円になる

架空の商品は、相談33,000円、講座11,000円、教材5,500円です。最初の24行は各8件の完了購入。続く6行には、返金2件、重複1件、取消1件、期間外2件を入れています。

計算に使った架空の元データ30行。金額は税込円、返金も元データでは正の数
行 取引ID 日付 商品 種別・状態 金額
1 T001 2026-09-01 相談 購入・完了 33,000
2 T002 2026-09-02 講座 購入・完了 11,000
3 T003 2026-09-03 教材 購入・完了 5,500
4 T004 2026-09-04 相談 購入・完了 33,000
5 T005 2026-09-05 講座 購入・完了 11,000
6 T006 2026-09-06 教材 購入・完了 5,500
7 T007 2026-09-07 相談 購入・完了 33,000
8 T008 2026-09-08 講座 購入・完了 11,000
9 T009 2026-09-09 教材 購入・完了 5,500
10 T010 2026-09-10 相談 購入・完了 33,000
11 T011 2026-09-11 講座 購入・完了 11,000
12 T012 2026-09-12 教材 購入・完了 5,500
13 T013 2026-09-13 相談 購入・完了 33,000
14 T014 2026-09-14 講座 購入・完了 11,000
15 T015 2026-09-15 教材 購入・完了 5,500
16 T016 2026-09-16 相談 購入・完了 33,000
17 T017 2026-09-17 講座 購入・完了 11,000
18 T018 2026-09-18 教材 購入・完了 5,500
19 T019 2026-09-19 相談 購入・完了 33,000
20 T020 2026-09-20 講座 購入・完了 11,000
21 T021 2026-09-21 教材 購入・完了 5,500
22 T022 2026-09-22 相談 購入・完了 33,000
23 T023 2026-09-23 講座 購入・完了 11,000
24 T024 2026-09-24 教材 購入・完了 5,500
25 R001 2026-09-25 相談 返金・完了 33,000
26 R002 2026-09-26 教材 返金・完了 5,500
27 T005 2026-09-05 講座 購入・完了 11,000
28 T028 2026-09-28 相談 購入・取消 33,000
29 T029 2026-08-31 相談 購入・完了 33,000
30 T030 2026-10-01 講座 購入・完了 11,000

金額列を全部足すだけなら522,500円です。しかし、この数字は今回定義した9月の管理用合計ではありません。表計算でもAIでも、足し算そのものが正しいことと、対象行が正しいことは別です。

元データを残し、採用・除外・符号を別欄にする

修正前の表を残したうえで、「採用判断」「判断理由」「集計用金額」を追加します。取消の行を消してしまうと、後からなぜ合計が変わったか追えません。以下のように、判断した内容を残す方が確認できます。

注意する6行の処理
行 処理 集計用金額
25 9月の完了返金。符号をマイナスへ −33,000円
26 9月の完了返金。符号をマイナスへ −5,500円
27 5行目と同一のT005。重複として除外 0円
28 取消のため除外 0円
29 8月31日で期間外 0円
30 10月1日で期間外 0円

元データにすでにマイナスで返金が入っている場合、この処理をそのまま重ねるとプラスへ戻ってしまいます。入力の仕様を確認してから、符号の揃え方を決めてください。

重複候補の同じIDで金額や状態が違う場合も、どちらかを勝手に採用しません。更新履歴なのか、取り込みの不具合なのかを元の記録へ戻って確認します。今回は内容まで同じ、という条件を明示した例です。

架空30行から4行を除外し購入24行と返金2行を採用する図
同一取引の重複1行、取消1行、期間外2行を除外し、返金2行は負の金額として集計します。

合計と商品別の数字を、別の計算で照合する

採用するのは購入24行と返金2行の計26行です。購入金額は、相談264,000円、講座88,000円、教材44,000円で、合計396,000円。返金38,500円を差し引くと357,500円になります。

今回の定義に沿った商品別の計算結果
商品 購入件数 購入金額 返金額 差引金額
相談 8件 264,000円 33,000円 231,000円
講座 8件 88,000円 0円 88,000円
教材 8件 44,000円 5,500円 38,500円
合計 24件 396,000円 38,500円 357,500円

確認は二方向から行えます。一つは商品別の差引金額、231,000+88,000+38,500=357,500円。もう一つは元の単純合計からの調整です。

522,500
−11,000(重複)
−33,000(取消)
−33,000(8月分)
−11,000(10月分)
−77,000(返金38,500円をプラスからマイナスへ)
=357,500円

返金の調整が38,500円ではなく77,000円なのは、元の合計にプラス38,500円が入っているからです。それを取り除いてゼロにし、さらに返金分を引きます。ここは、AIの説明がもっともらしくても実際に計算して確かめたい所です。

表計算で、採用26行の「商品」をA2:A27、「符号を揃えた金額」をB2:B27に置くなら、相談の差引金額は =SUMIF(A2:A27,"相談",B2:B27) で集計できます。条件に合う行の対応値を合計する関数です。参照:MicrosoftのSUMIF関数の説明。これは列をその配置にした場合の式で、元の30行表へそのまま貼る式ではありません。

AIへの依頼に、除外理由と再計算を含める

この表は説明用の架空取引です。
目的:2026年9月の完了取引の購入金額から返金を引く。
先に、列の意味と対象条件で不明な点を挙げてください。
条件:
・9月1日以上、10月1日未満。
・取消と期間外を除外。
・同一ID・同一内容の重複を一度だけ数える。
・返金は元データで正の数。集計用には負の数へ。
出力:
1. 元行番号を残した採用・除外と理由。
2. 商品別の購入件数、購入額、返金額、差引金額。
3. 全体合計との照合。
4. この表から言えることと言えないこと。
顧客数、利益、前月比、集客施策の効果は推測しない。

数式やプログラムを実行できるAI環境なら、使った集計式や処理も残します。文章で計算手順を説明しただけなら、実際に実行した結果とは区別してください。別の手段で照合できる元行番号があると、数値が違うときに戻る場所が分かります。

分析コメントは、表が答えられる範囲に収める

この架空データから採用できる説明と、追加情報が必要な説明
コメント 判断 理由
9月の定義した差引金額は357,500円 採用 対象・期間・計算条件が一致
相談の差引金額が3商品の中で最大 採用 231,000円で比較できる
相談は需要が伸びている 保留 前の期間や閲覧・問合せ数がない
相談が最も利益率の高い商品 保留 原価・対応時間・経費がない
購入者は24人だった 保留 24は購入取引数。人の重複を判定する情報がない

この例では、購入件数は各商品8件で同じです。相談の金額が大きいのは、少なくとも単価の違いが影響しています。差引金額だけを見て「今後は相談に集中しよう」と決めるには、提供時間や継続性、問い合わせの質など、別の判断材料が必要です。

最初の一歩は、AIへデータを渡す前に、いつの何を足したいかを一文にすることです。そして元データ、除外理由、集計用金額を分けて残す。ここまで揃えば、AIの説明が自分の数字と違ったときも、どの行と条件から確かめるかが見えてきます。