親の介護費用は誰が負担する?払えない時は?

そろそろ親の介護を考えなくてはいけない時期になった人も多いのではないでしょうか。介護費用やさまざまな手続き、面倒なことも多そうですが避けて通るわけにはいきません。ここでは親の介護費用について考えてみたいと思います。

記事の目次

親の介護費用【誰が負担する?】

  • 親の介護費用はいくらかかる?

親が要介護となったとたん介護費用というものが発生します。訪問看護・訪問介護・デイケア・通所介護などなど、施設に入所しないにしてもかなりの費用がかかってしまうのです。

生命保険文化センターでは「要介護3」で1ヶ月の介護費用が1割負担で35,000円が必要になるとしています。さらに今年からは一定以上の所得のある場合、2割負担となるため1ヶ月の介護費用が7万円になる家庭も出てくるのです。

在宅ケアでもこれだけの費用が掛かる上、特別養護老人ホームへ入所するとなれば部屋代と食事代でプラス10万円~15万円を考えておかなくてはならないのです。

  • 親の介護費用は誰が負担する?

親の介護費用というのは介護を受ける人(親)が負担するというのが基本です。しかし国民年金しか受け取っていないような場合ではとても親自身だけでは介護費用を出していくことができません。

その場合は「高額介護サービス費制度」といった自治体の制度を利用するようにします。わたしたちは日頃からそのような自治体のサポートを調べておかなくてはなりません。また親だけでなく自分たちの老後にも備えて貯金という形で備えておくことが大事です。介護費用とは1人300万円が平均的な金額といわれているからです。

では現実問題としてはどうでしょう。現実には公的な介護保険の支給だけでは介護はできません。とくに親が別居の場合では買い物支援など民間のサービスも受けなくては生活していけないのです。そうなってくると子供である自分たちが親の介護費用の負担をしなくてはならなくなります。

  • 介護費用の例

◆訪問看護:8,160円(月5回)……40,800円

◆訪問介護:3,940円(月22回)……86,680円

◆デイケア:8,630円(月13回)……88,530円

◆ショートステイ:8,630円(月3回)……25,890円

◆福祉用具貸与:月額25,000円

合計266,900円

これを1割負担として毎月26,690円

◆介護保険対象外のサービス(ショートステイ食費):7,500円

26,690+7,500円=34,190円

出典:http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/10.html

この介護例は脳梗塞で右半身マヒと軽度の言語障害が残った「要介護3認定」62才男性のものです。妻と娘は土日を自分たちで介護することで介護費用を抑えていますが、施設への入所となると毎月の負担額は15万円ほどになってしまうのです。

そうなった場合は一般的な介護費用とされている300万円ではとてもまかなうことができません。単純計算しただけでも3年で540万円となるのです。

【15万円×12ヶ月×3年=540万円】

泣いても笑っても自分を生んでくれた親です。しっかりとお金を貯めておいて「豊かな老後生活」を送ってもらいたいと思いませんか。

引用:https://pixabay.com

親の介護費用【兄弟の負担】

日本では親の介護となると結局は長男や長女が受け持ってしまうことが多いようです。これは昔の風習によるもので、戦前は家督を相続するのが長男や長女であったため、当然介護も長男、長女がするのが当たり前とされてきました。

しかし今では子供は平等に財産を相続することになっています。ということは介護も平等にするのが適切なのではないでしょうか。しかしながら、介護については同居している、または近くに住んでいるというだけで兄弟の負担が平等ではないことが多いのです。

  • 長男・長女の立場

長男や長女の立場では、ある程度は自分たちが親の介護をするのが当然だと考えている人が多いようです。しかし昔と今とでは介護の負担がまったくと言っていいほど違ってきています。それは平均寿命が延びたことで介護の期間も長くなっているからです。

そのため介護のために金銭的なこと以外にも働きに出られないなどの問題が長男・長女に起こってしまっているのです。金銭的に余裕があったとしても旅行に行けないなどと生活に制約が発生することは避けられません。

長男・長女にとっては実の親の問題ですので当然だと考えますが、結果的に一番の負担を背負うのは長男の妻であることが多いのです。親の年金で介護費用がまかなえるうちはいいものの、経済的にも家計を圧迫されるようになってくると、気持ちの持って行き場がなくなるでしょう。

  • 長男・長女以外の立場

親の介護に関して関心が低い傾向にあるのが弟や妹たちです。もともと家を継ぐのは自分たちではないという考えが強いので、親の介護も兄や姉の義務だと思っています。しかしながら兄や姉にすべてまかせているというのは「甘え」であると認識しなくてはなりません。

金銭的にも実際の介護の助けにおいても、自分たちから負担を申し出るのが常識だと言えます。介護費用は親自身が負担することが普通とされていますので、親の年金や貯金などで介護費用がまかなえず、長男・長女が負担している場合は遺産相続の際にその負担した部分は長男・長女のものとなります。

そのことで後々、嫌な思いをしたくなければ介護費用の負担も生前から申し出るようにしたほうがいいしょう。

  • 調停になることも

親の介護費用をめぐって兄弟間でもめることは少なくありません。調停になると兄弟平等に負担するように和解が勧告されます。兄弟でもめるというのは情けない話であり、ほんとうにみっともないことです。

ここで、気持ちのいい書き込みがありましたのでご紹介します。

親の介護費用で弁護士まで立てて争わないといけないのなら、介護される親もいたたまれないでしょうね・・・
うちは三女の私が自分の母親を自宅介護しています。母の年金と父の年金で母の介護費用は足りています。
自宅介護なので、私が働きにいけず、拘束されますが、母が生前入っていた保険でなんとかしています。
姉二人からは援助はないです。
遺産は渡そうと思っています。
親孝行が出来てしあわせですよ。

出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1385942303

あらためて「親孝行」という美徳が掛け値のない美しいものだと感じさせられます。代償のない介護こそが本来の在り方なのかもしれません。

引用:https://pixabay.com

親の介護費用【確定申告】

親の介護費用は一定の金額を超えた場合、「医療費控除」として確定申告で税金の還付を受けることができます。医療費の対象は訪問看護やデイサービスなどです。また必ずしも同居の親である必要はなく、親の介護費用を負担したということであれば認められています。

  • 医療費控除とは

医療費控除とは1年間の間に支払った医療費を所得から差し引くことができるというものです。計算式は・・・

【1年間に支払った医療費の総額-保険金で補填される額】-10万円=医療費控除額

1年間で支払った自己負担分の医療費が10万円を超える場合は所得金額から控除されるということになります。そのため医療費の明細および領収書を保管しておく必要があります。確定申告で「医療費控除の明細書」を添付することで控除を受けられることができるのです。自分の医療費と親の介護費用を合算して申告しましょう。

  • 医療費控除の対象

親の介護でかかった費用のうち、医療費控除の対象となるのは次のものです。

◆通院費

◆診察費・薬代

◆医師、看護師の送迎費

◆入院の部屋代、食事代

◆医療用器具の購入費

◆松葉づえ、入れ歯、補聴器の購入費

◆6ヶ月以上寝たきりの場合のオムツ代

※医師の発行するオムツ使用証明書が必要

◆デイサービス

◆通所サービス

他にも介護費用として支出している方は医療費として認められるものがないか、税務署で確認をとってみましょう。

  • 高額介護合算療養費制度

高額介護合算療養費制度とは国民健康保険や後期高齢者医療制度などの適用を受けている世帯に介護保険を受けている人がいる場合、自己負担限度額を超えた分の金額が受給される制度です。

高額介護合算療養費制度を利用できるのは医療保険と介護保険の両方を使っていることと健康保険に入っていることが条件となります。

70歳未満の国民健康保険加入者がいる世帯では次の条件により介護費負担分が受給されます。

  • 住民税非課税:限度額34万円
  • 年収210万円以下:限度額60万円
  • 年収210万円超・600万円以下:限度額67万円
  • 年収600万円超・901万円以下:限度額141万円
  • 年収901万円超:限度額212万円

確定申告で計算する介護費用と医療費は1月1日から12月31日までの分ですが、高額介護合算療養費制度は8月1日から7月31日までとなりますので注意が必要です。相談窓口は加入している医療保険となりますので、くわしくは問い合わせてみてください。

引用:https://pixabay.com

親の介護費用【贈与税、確定申告について】

親の介護では兄弟間でもめることが多いのですが、その問題は親が亡くなった後の相続の問題にも発展します。親の介護費用を負担した方が相続の取り分について申し立てを行うなどとてもよくあることなのです。それは相続する金額が少ないことで起こりやすいといいます。

遺産相続する金額の全体の32%は1000万円以下、44%は1000万円から5000万円とのデータがあります。そのため数百万円の介護費用を主張する方と平等に分けるべきだと主張する方とのいさかいが起こってしまいます。大事なのは親の介護で使った金額をきっちりと記録しておくことです。

  • 大事なのは生前贈与

仲の良かった家族や兄弟がもめてしまわないためにも、生前贈与の活用が重要になってきます。介護費用の負担や介護によって働けなくなることを考慮して生前から財産を贈与するのです。

贈与には贈与税がかかるのではと考える方もいますが、1月1日から12月31日までの贈与額が110万円までなら贈与税はかかりません。110万円を超える場合には贈与をうけた人が翌年に確定申告をしなくてはなりません。

介護をしてくれる子供に毎年贈与をすることで相続時の財産を減らし兄弟に平等に相続しても、介護してくれた子供だけに負担がかからないように準備するのです。

  • 生命保険という手も

介護する子供を受取人に生命保険に加入するという方法も兄弟の介護不平等を生まない上で有効です。死亡保険金は受取人が定められていて遺産の分割の対象にはなりません。そのため介護してくれる子供だけが介護費用を負担するという問題の解決になります。毎年の保険料は贈与税のかからない範囲で親が負担するといいでしょう。

  • 遺言書で相続割合を決めておく

「終活」という言葉ができて以来、遺言書を書く人が増えてきました。今はまだまだ元気でも将来認知症になった時を想定して財産の分割をしておくのです。遺言書は公証役場で公証人に書いてもらいます。

公証人に書いてもらうことで不備やトラブルになる可能性が少なく、原本を保管してもらえるためもっとも安全な遺言書の作り方だといえるでしょう。必要なものは印鑑証明書、相続する人の戸籍謄本、住民票、不動産を相続させる場合は固定資産評価証明書、登記事項証明書などが必要です。

費用は相続する財産の価額によって違います。500万円までなら11,000円、3000万円までで23,000円、1億円まででは43,000円が基本料金となっています。これにプラス11,000の費用が最低料金です。

引用:https://pixabay.com

親の介護費用【払えない時】

親が厚生年金に入っていて月に15,6万円の年金を受給している場合は、介護施設に入れてなんとかやっていけます。しかし国民年金にしか入っていなければ、月の受給額は5万円ほどで、子供が毎月10万円ほどを負担しなくてはならなくなるのです。

自分の生活だけでも目一杯なのに親の介護費用まで負担することはとても無理、そう判断した場合、どうすればいいのでしょうか。

  • 生活保護を申請する

生活保護といえば最終段階だと考えている人は多いのですが、医療費が高額な人など申請して受理されるケースもあるのです。親の介護費用を前にして絶望的な気持ちになっているとは思いますが、まずは市区町村役場で相談してみましょう。

生活保護は世帯全体が対象となりますので、親が同居している場合は家族全体の生活状況から判断されることになります。別居であれば親の世帯だけを申請すればいいでしょう。

  • 親の家を売却する

生活保護申請をしても受理されなかった場合は親の持ち家を売却することを考えてみましょう。施設に入所することになれば残念ながらもう一度、家に帰ってきて自立することはほぼないといえるでしょう。

施設に入った高齢者は平均4年で退所しています。そのうちの約75%が病死で約25%が医療施設への入院だと言われているのです。いずれ親が亡くなった時の税金も空き家では高くなってしまいます。早いうちに判断をした方がいいでしょう。

  • 収入を増やす

親の介護費用が払えないということは、ご本人の老後も心配です。まだ若いうちに何とか収入を増やす方法を考えましょう。副業を始めるなどやれることはいくつでもあるはずです。悩んでいるよりもまずは行動することが大事です。

<副業といわれるもの>

◆FX

負ける人も多いので確実とはいえませんが副業にしている人も多くいます。勉強してみて自分にやれそうだと思えたら少しずつ練習を始めるのもいいでしょう。

◆ライティング

インターネットですぐに始められる副業です。文章を書くことが好きな人に向いています。月に5万円くらいを目指すことができるでしょう。

◆ブログアフィリエイト

ライティングのように書いた記事の分だけ報酬がもらえるわけではありませんが、ライティングをするよりも将来性のある副業です。時間を投資する価値はじゅうぶんにあると言えます。

◆Youtube

Youtubeもブログアフィリエイトのようにすぐにはお金になりませんが将来的には自動的に稼ぎ続けてくれる可能性があります。実際にYoutubeで生活が一変したという人が多くいるくらいですから試してみるのもいいでしょう。

親の介護費用が払えないというのは惨めな心境です。また親にも申し訳なく、辛いことでしょう。大切なことは一人で悩まないことです。市区町村役場やケアマネージャーなどに相談に乗ってもらうことで活路が開けるかもしれません。事情を説明して今の状況を乗り切りましょう。

そして同時に収入を増やすことがあなた自身を守ることにつながります。何事も「無理」と決めつけないで、一歩踏み出してください。

引用:https://pixabay.com/ja/imac