ダブルワークの社会保険と確定申告について解説!

ダブルワークなど働き方の形が多様化する中、社会保険や確定申告の正しい方法を考えなくてはなりません。サラリーマン1本の会社員とは違いダブルワーカーたちにとっては、自己責任がとても大きいように思いますね。知らなかったでは済まされないといったことも多くありますので、見ていきたいと思います。

記事の目次

ダブルワークなら社会保険はどっちで加入?

ダブルワークする場合、社会保険はどうなるのでしょうか。社会保険の場合は、勤める会社が社会保険をかける義務があるかどうかで決まってくることになります。たとえば従業員5名以下の飲食店などでは、法人でもない限り社会保険をかける義務がありませんから、こちらが入りたいといっても入ってもらえません。

ところが両方の会社が法人である場合は、勤務時間によっては両方に加入する必要があったりと、かなりややこしかったり感じるでしょう。また、社会保険の手続きのせいで内緒にしていたダブルワークがばれてしまうこともあります。


1ヶ所の会社のみ、社会保険適用の場合


ダブルワークのうち、1ヶ所の会社のみ社会保険の加入条件を満たしている場合は、大きな問題は発生しません。その会社からの給料だけで社会保険料も算出されます。とくに手続きの必要もありませんので、ダブルワークしていない普通の会社員と同じだと思っていいです。


2ヶ所の会社とも、社会保険適用の場合


さて、ダブルワークをしていて一番気になるのがこのケースでしょう。そしてどちらの会社でも週に30時間以上勤務があれば、二重加入ということになります。加入条件を満たした日(所属した日)の翌日から10日以内に

「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業勤務届」というものを提出しなくてはなりません。

そうすることで両方の会社の給料の合計金額が決まります。そしてその割合に合わせてそれぞれの会社の保険料負担分が決められます。

日本年金機構では次のように定めています。

(1)被保険者が同時に複数(2か所以上)の適用事業所に使用されることにより、管轄する年金事務所または保険者が複数となる場合は、被保険者が届出を行い、年金事務所または保険者のいずれかを選択します。

(2)届出の結果、選択した事業所を管轄する年金事務所(または健康保険組合)が当該被保険者に関する事務を行うこととなります。なお、健康保険組合を選択した場合であっても厚生年金保険の事務は年金事務所が行います。

※ この届書の提出に当っては、適用事業所の被保険者となるための「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出が前提となります。新たに被保険者となる場合は、事業所から資格取得届が提出されていることを確認してください。

出典:http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20131022.html


どちらの会社も社会保険適用でない場合


ダブルワークをしていて、両方の会社で加入条件を満たさない場合には国民健康保険と国民年金へ加入しなくてはなりません。

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ダブルワークで社会保険の加入条件


社会保険の加入条件


社会保険は事実上、強制保険でもありますが、労働時間によっては加入できない場合があります。ダブルワークの場合は社会保険の加入条件をみたしているかを確認する必要があります。

  • 1日または1週間の労働時間:一般社員の3/4以上
  • 1ヶ月の労働日数:一般社員の3/4以上

一般社員とはフルタイムの社員を指しています。一般社員の1週間の労働時間を40時間とすると、3/4ですので、1週間に30時間以上働いていることが社会保険加入の条件となります。

この条件には気をつけなくてはなりません。社会保険の加入条件を逆手にとって契約をする企業もないとは言えないからです。社会保険は会社の負担も大きいため、1週間に30時間を超えない範囲で仕事をしている契約社員はざらにいるのです。そのあたりはパートタイマーやアルバイトでも気をつけた方がいいでしょう。

なぜなら、今は目先の自分の保険負担料を節約したいと思いがちですが、将来、年金生活をする時にもらえる金額が大きく違ってくるのです。社会保険にはできるだけ入るようにしたほうが賢明です。


社会保険の加入条件、従業員501人以上の場合


社会保険の加入条件は従業員501人以上の会社では、それ以外の会社にくらべてより少ない労働時間で社会保険への加入が義務となります。

  • 1週間の労働時間:20時間以上
  • 1ヶ月の給料が8.8万円(年間106万円以上)
  • 1年以上の雇用が見込まれる

この条件の引き下げによって、困るのが夫の扶養家族となっている妻の場合です。これまでは年収130万円までは夫の扶養家族として社会保険に加入できており、保険料の負担がなかったけれど、今後は年収が106万円を超えた時点で社会保険に入らなくてはならないのです。

ですが、現在、年金生活者が受給している年金を見れば、若いうちにがんばっておくことの大事さも感じさせられます。

国民年金平均受給額

国民年金 単身者:55,244円

国民年金 夫婦:110,488円

厚生年金 単身者:145,305円

厚生年金(夫)+国民年金(妻):221,364円

厚生年金 夫婦共稼ぎ:268,251円~290,610円

出典:https://seniorguide.jp/article/1001439.html

いかがでしょうか。共働きで社会保険をかけていれば、老後かなり安心できそうです。

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ダブルワークで社会保険を扶養内におさえるには?

社会保険の適用拡大について、夫の扶養家族のままでいるか、それとも収入を増やすためにも妻が新たに社会保険に加入するのか、世間では意見が分かれているようです。女性のうち約65%が夫の扶養のままでいることを選び、35%は夫の扶養からはずれるといいます。

年間収入106万円の壁ともいわれる社会保険加入問題ですが、月収にして8.8万円です。現在の収入が8.8万円ちょうどくらいの人ではその選択は半分半分くらいで、収入が10万円を超える女性では過半数が社会保険加入を受け入れるようです。

ではみんなの声を聞いてみましょう。

<夫の扶養家族のままいる派>

  • 少しの時間オーバーで、扶養から外れるのは、勿体ないから
  • 夫の扶養から外れると125万以上の年収を稼がなければトントンにならない。となるとパートより正社員で働いた方が良いが、子供がまだ小さいので、フルタイムは無理。パートで社会保険に入るのは勿体ない
  • 社会保険の負担が大きい。なんのためにきりつめた生活をしているか無駄な感じがする。いっそたくさん働ければよいが子供の役員、行事、当番を考えるとフルには働けず微妙な収入で壁にあたります
  • 社保加入で引かれる額が増えるともっと沢山働かなきゃいけなくなるし、保育料や市民税が上がるから

<夫の扶養家族からはずれる派>

  • 将来を考えるとそのほうが良い
  • 稼げるうちに稼いで自分の年金に反映させたい
  • 将来的にフルタイムで働きたいので、時間を減らす方向では考えていない

ダブルワークで社会保険を扶養内におさえるには


「夫の扶養のままでいる」という選択をする場合にはいちばん多い意見が「収入を8.8万円以内におさえるよう労働時間を制限する」といったものです。また、「従業員500人以下の職場に転職することで収入も減らさず、社会保険にも入らない」といった少数派もいます。

女性の社会進出を推進するための社会保険適用拡大ですが、逆に労働時間を減らす女性が多いというのは皮肉ですね。夫の社会保険の扶養内に入るために「妻の年収」という条件があるのも問題です。

もともと男性が働いて女性が家を守るという文化からこのような扶養制度があるのでしょうが、扶養範囲を設けずに自由選択にしてもいいのではないかと思ってしまいます。そうすれば、もっと働きやすい社会になるのではないでしょうか。

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ダブルワークで確定申告はパートでも必要?


確定申告とは


確定申告とは1年間の収入から経費を差し引いた所得を税務署に申告し、所得にかかる税金を支払うための手続きです。1年間とは1月1日~12月31日までをいい、確定申告はその翌年の2月16日から3月15日までに行います。

ダブルワークの場合、ひとつの会社で年末調整をしてくれていても、もうひとつの会社での収入がある場合は、合算して確定申告をしなくてはならない場合があります。


確定申告しなくてはならない人


  • 給与の年間収入が2000万円を超える人
  • 1ヶ所の会社から給与を受けている人でそれ以外の所得が年間20万円を超える人
  • 2ヶ所以上から給与を受けていて最も給与の多い会社以外の所得の合計が年間20万円を超える人
  • 源泉徴収義務のない者から給与等の支払いを受けた人

※源泉徴収義務のない者とは

お手伝いさんなど2人以下の使用人に給与を払っている人や確定申告のために税理を雇った会社員をいいます。


報酬なら経費が認められる


時給制の仕事やアルバイトの場合、給与所得となり仕事をするためにかかった費用であっても経費としては認められません。ですが在宅でデータ入力をしたり、契約を取り付けたりしてインセンティブを得るような仕事では「歩合制」「請負」「業務委託」に分類され、必要経費が認められることになるのです。

ダブルワークのひとつが業務委託などに該当している場合は、収入から経費を差し引いた所得が20万円以上となる場合のみ確定申告の義務が発生します。ということは年間の収入が100万円だとしても80万円の経費がかかっていれば確定申告はしなくていいことになるのです。日雇いのバイトも多くは業務委託に入りますから往復の交通費などが経費として認められます。


経費として認められるもの


  • 家賃・光熱費(事業に使っている部分)
  • パソコン購入費
  • 通信費

(インターネット回線料・携帯電話など)

  • 車の車検代・ガソリン代
  • 電車、バス、タクシー代などの交通費
  • 交際費(打ち合わせの際のコーヒー代、食事代など)
  • セミナー参加費、図書購入費

経費として認められると税金の面でかなり有利になることがわかりますね。そのためダブルワークを始める前には自分がどのような形態で契約するのかをしっかり確認しておいた方がいいでしょう。

経費は領収書をとっておくことが必要です。そして会計ソフトなどがなくても、エクセルで経費が発生するごとに入力するように習慣をつけておけば、確定申告が必要になったとしても慌てずにすみます。

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ダブルワークで確定申告は103万以下は必要ない?


自分の収入を把握しておく


ダブルワークをしている場合は、ひとつの会社で仕事をしているよりも、ちょっと複雑に感じてしまいますね。ですが、給与明細、年間の所得の管理はとても大事なことです。手元にない場合は今からでも、1年間の給与明細を勤めている会社の経理担当から取り寄せるようにしましょう。1年間とは1月1日から12月31日までをいいます。

年間の所得を確認することで、確定申告の義務があるかどうかを確認することができます。確定申告の義務はダブルワークの両方の所得の合計が103万円をこえたときに発生します。103万円を超えた時には、親の扶養をはずれることになり国民年金や国民健康保険に自分で加入する義務も発生します。

※注意が必要なのは103万円が給与所得であることです。ダブルワークが会社勤めでなく、自営の場合は所得が38万円を超えると自営業者として確定申告が必要となります。

※ダブルワークのひとつが主たる収入となっていて、すでに扶養家族でない場合は、もう一つの仕事は「副業」となり、副業からの所得が20万円を超える場合に確定申告が必要になります。


確定申告することでいいことも


ダブルワークの所得の合計が103万円以下の場合、納税の義務が発生しませんので確定申告の必要はありません。ですが、給与明細を見て「源泉徴収」されていれば、確定申告をすることで、余分に支払った税金が返ってくる場合があります。


確定申告をした方がいいケース


  • ダブルワークが自営業であれば年間の所得が38万円以下では確定申告の必要はありませんが、経費などにより赤字であれば確定申告をすることで還付を受けられる場合と住民税が減額されることがあります。
  • ダブルワークのひとつを辞めた場合は、源泉徴収をされているにもかかわらず、年末調整されていない場合がありますので、確定申告で還付を受けられることがあります。
  • 医療費が10万円以上かかった場合、または災害で資産に被害があった場合は還付を受けることができます。

確定申告は面倒で税金を多く取られてしまうイメージを持つ人は多いのですが、悪いことばかりではありません。確定申告をすることで、余分に支払っている税金を取り戻すこともできます。税金は払うべきものは払い、返してもらうものはきっちりと返してもらいましょう。

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ダブルワークでの確定申告のやり方を解説

ダブルワークの場合、確定申告がとても複雑なのではないかと、不安に感じられている方も多いでしょう。ですが安心してください。ダブルワークでも確定申告は考えるよりずっと簡単です。


確定申告の時期


確定申告は毎年 2月16日から3月15日までに行い、現金、口座振替、クレジットで納税を行います。確定申告はインターネットでも行うことができますが、慣れない場合などは直接、管轄の税務署へ行って済ませることもできます。その場合は、期限が迫るほど込み合いますので、できるだけ早めに行くようにしましょう。


準備するもの


  • ダブルワークする会社の源泉徴収票
  • マイナンバーカード(またはマイナンバー+本人確認書類)の写し

※配偶者・扶養者がいる場合はそのマイナンバーも必要になります。

  • 確定申告書用紙

ダブルワークが会社からの給与である場合は以上で準備は終わりですが、ダブルワークのひとつが「事業所得」となる場合は経費が認められますので「経費明細」を準備しておくようにします。

事業所得とはアフィリエイトやクラウドソーシングなどの給与でない収入をいいます。事業所得の場合は、家賃の一部やインターネットプロバイダーなどの通信費、交通費が経費として認められます。


確定申告書とは


確定申告書は直接、税務署で手に入れることもできますが、パソコンがあれば、国税庁のホームページの「確定申告書作成コーナー」で作成することができます。

  • 確定申告書A

給与所得、雑所得、配当所得、一時所得だけの会社員やアルバイト・パートの人は確定申告書Aを使います。

  • 確定申告書B

給与所得以外のアフィリエイト収入などがある人や個人事業主は確定申告書Bで申告します。どちらかわからない場合は確定申告書Bを使用するといいでしょう。

税務署ではわからないことも、丁寧にアドバイスしてくれますので不安だという人は、事前相談などに出向くといいでしょう。


確定申告の期間が過ぎてしまった場合


確定申告の時期を過ぎてしまうと「無申告加算税」が追加されてしまいます。無申告加算税とは本来納付しなくてはいけない税額の5%です。これは自分で申告した場合ですが、もし税務署の方から無申告を指摘されればその加算額はもっと大きくなってしまいます。

その額は納付額が50万円までならば10%、50万円を超えると15%になってしまうのです。さらに悪質だと判断された場合はもっと支払うことに・・・。確定申告はしっかりと行いましょう。

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